2021.10.26 YouTube
みなさんこんにちは。今回モッコウジムのPart3として、箱馬(はこうま)を作成しました。
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その中で触れた「尺貫法」について詳しくご説明したいと思います。
尺貫法(しゃっかんほう)とは、東アジアで広く使われている、長さ・面積などの単位系のひとつです。
尺貫法の「尺」は長さ、「貫」は質量の単位を表すものです。合わせて体積は升(しょう)で表します。
度量衡(どりょうこう)とも言います。(度=長さ・距離 量=体積・容量 衡=質量)
日本では計量法によって1959年に尺貫法は廃止となり、メートルやキログラムで表記されるようになりました。
正式な取引や証明では使えなくなりましたが、年配の職人さんなんかでは、尺貫法を用いて作業する人もいます。
端材の中にはその時のメモ書きが残っていて、木材に「◯尺」なんて書いてあったりもします。
今回作った箱馬が、この尺貫法とどのような関わりを持つのか。
詳細を説明してまいります。
まずこの箱馬というのは何かというと、簡単にいうと人が乗る台です。
テレビ業界や舞台美術の世界で、カメラマンや技術スタッフが乗って作業する箱で、すごく簡単に作れちゃいます。
シンプルながら非常によくできた構成になっていて、様々な木工のエッセンスが詰まっているのがこの箱馬。
まず、「箱」という仕組み。
家具屋に入った新人が、一番最初は「箱をちゃんと作れるようになれ」、というのを言われる、というほど基本的なことです。
簡単に見えて実は結構考えて作らないといけないのが箱です。
箱馬には特別決まった様式があるわけじゃないですが、特に合理的で優れていると思ったデザインの物を今回は製作しました。
高さ150mm 幅300mm 長さ450mm の寸法で作ります。
この寸法を見て何か気付きますでしょうか?
150を1とすると、ちょうど1:2:3の寸法で構成されています。
この美しい比率で出来ていることによって、複数個を組み合わせた時に、キレイにまとまるんです。
例えば、この箱馬を縦長に立てた時、
3つを組み合わせると上記のように、また先ほどと同じ300mm×450mmの寸法が現れます。
偶然でしょうか。いいえ違います。
このようなものを”モジュール”と言って、たくさん組み合わせてもキレイな比率で並ぶし、1個除いても別の形にできるし、あるいは必要な要素をさらに足すこともできる、ものづくりの大切な仕組みです。
一個一個が機能を持ったユニットで構成していく大きなシステム・・・みたいな意味合いがあります。
家具ではこのモジュールで考えられて作られているものが非常に多くあり、その基本となるエッセンスが箱馬には詰められているのです。
また、この1:2:3の寸法も、非常に理に適(かな)っています。
今回はベニヤ合板(ラワン材)というものを使って箱馬を作りました。
もともと安価だったのですが、最近値段が高騰してきてる材料です。
安い割にはしっかりとしていて、あまり仕上げ用という感じではないですが、ある程度の強度もあるDIYに適した素材。
これの3×6(サブロク)サイズというのを用意しました。
サブロクというのは、寸法でいうと910mm × 1820mm のサイズのことを指してこう呼びます。
一体何が3×6なのか。
910を3で割ると、およそ303。
1820を6で割ると、これまた303。
303という数字が基準になって、それの3:6というのがベニヤ合板の規格になっているようですね。
この303mmという数字は一体なんなのか。
正解は1尺(しゃく)の長さです。
3.9273km → 1里(36町)
109.09m → 1町(60間)
1818.2mm → 1間(6尺)
303.03mm → 1尺(10寸)
30.303mm → 1寸(10分)
3.0303mm → 1分(10厘)
0.303mm → 1厘
という様な規格が決まっています。
これが冒頭で紹介した尺貫法です。
上の表から、
サブロクの長辺の長さは1間、というのがわかりますね。
さらに、みなさん馴染みのある1畳という単位。
これ、「1畳=3尺×6尺(サブロク)」なんですね〜。
余談ですが、「2畳=1坪」です。1坪は約3.3平米。また3という数字が。面白いですよね。
全部キレイにつながっているんです。
この尺貫法に基づいたモジュールを使用した代表的なものでいうと、レゴブロックが挙げられます。
レゴは全てのパーツがきちんと規格の沿ったサイズで作られているため、新商品・旧商品問わず互換性があり、ジョイントがすごく便利で幅広く応用の効く、素晴らしい作りとなっているのです。
これと同じ仕組みの箱馬というものは、地味だけどすごいんです。ということで話は箱馬に戻ります。
今回の箱馬製作には、さっき言ったサブロクというサイズのベニヤ板を購入して、各パーツにホームセンターでカットしてもらいます。
(WOODWORK CENTERではホームセンターよりさらに緻密にカット可能です。ご希望の方はご連絡ください。)
どういうパーツが必要なのか整理しましょう。
AとBという2種類のパーツから構成されているものを作ります。
A6枚、B3枚を組み合わせて出来ています。
一枚の3×6板から幅120mのパーツは7枚採れます。(910÷120=7.583)
7等分した柵からAとBのパーツを上の図のように採るとだいぶキレイに採れますね!
2柵で1台の箱馬が作れることがわかります。
3×6ベニヤ1枚で、3.5台の箱馬が製作可能というわけです。
前述の通り尺貫法に基づいて製作すると、モジュールとして使い勝手が良い、という面のみならず、歩留まりが良いという利点もあります。
「歩留まり」というのは、製造業において、”生産された製品のうち良品の割合”という意味の言葉です。
こういう風に書くとちょっと難しいですが、ざっくり言うと、”材料からどれだけ無駄なく素材として使えるか”って言うことです。
今回の箱馬はまさに歩留まりが良いですよね。
みなさんDIYは趣味でやることが多いと思いますが、歩留まりをよく考えて製作すると地球環境にも優しいし、加工の工数も手間も減らせて、さらにプロに近づけますので是非取り入れてみてください。
寸法的に複数重ねてキレイに使えるのはわかりましたが、組み立てる際に歪んでいたら、せっかくの美しい寸法も意味なしですよね。
組み立てる際にすごく大事なのは、「矩(かね)」を出せるかということです。
矩とは、直角90度という意味です。
箱を作る上で、全て90度になるように組む、ということはとても重要で、DIYをワンランク上のものにするには矩を意識することがマストです。
なのでもし材料をホームセンターで切ってもらうとしたら、しっかり矩を出すように注文することをオススメします。
店員さんに(この人・・・できる・・・)と思われますよ。
いかがでしたでしょうか。
箱馬には、木工に大切なエッセンスが散りばめられているということがわかりましたね。
DIY初心者の方が練習で製作するには持ってこいだと思いますので、是非ご自宅で作ってみてください。
次回は実際に製作中の様子をお届けしたいと思います。
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